おもしろ書籍

今回は、趣向を変えて、一般の書籍について紹介してみようと思います。   「運ぶヒト」の人類学   著者の川田順造先生は、文化人類学者として知られているようです。 (パリ第5大学民族学博士であり、文化功労者でもあるとか…すごいな…)。   「鍼灸師が文化人類学の本を読んで意味あるのかよ」   …という声が聞こえてくるようです(笑)   が、   この書籍、鍼灸師にとって、目から鱗の内容が盛沢山なのです。 「運ぶこと」の影響   本書は、 「運ぶこと」 を主眼に置くことで、人類を見つめ直しています。   実際上、広い意味での「運ぶこと」の獲得は、世界での優劣を決めることにも繋がりますが、    “――― 直立二足歩行が、ある嵩と重さをもった「荷物」を、かなりの距離「運ぶこと」を可能にしたことは確かだ” 上記の文章は、本書からの抜粋ですが、人類に独特な運搬方法は、姿勢・歩容にも大きな影響を与えているようです。   姿勢や歩容が骨格に大きく依存しているのは当然のことです。   人類は、他の霊長類と大きく異なる特性によって二足歩行を可能にしています。 例えば、   “頭蓋骨だけから、どうして二足歩行で歩いたことがわかるのか。それは―――”   それは…なんでしょう…続きは、実際の本をご覧ください(笑)   人類が獲得した直立二足歩行は、生活様式の中に含まれる「運搬」によっても変容を見せ、 例えば、西アフ…

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枳実と枳殻

経穴ネタから少し離れまして、今回はダイダイについて。   お正月飾りの思い出 私の実家では、お正月飾りを作っていました(いまも作っていますが)。   子どものころは、ウラジロやゆずり葉などを組み合わせて、小さなお飾りを作っていました。   ウラジロの向きを間違えて怒られた記憶があります…。     お正月飾りを作る専用の作業場は、石油ストーブで温められ、垂れ下がる昆布と畳表の香り漂う、心地よい空間でした。    その中には、鏡餅の上に鎮座した橙(ダイダイ)もありました。     ダイダイの名称の由来は、果実が2~3年にわたって実り続ける(ホント?)ことから、「代々」が転じた「ダイダイ」と名付けられたのだとか。      「代々の繁栄」として縁起物となるため、鏡餅に乗せられているんですね。   お雑煮などにいれることもありますが、どんど焼きの時に、お正月飾りと焼かれたダイダイを食べたときは、苦くて顔をしかめた記憶があります。   枳実と枳殻   さて、このダイダイですが、幼果期に採取されたものを「枳実(キジツ)」、未成熟果実のまま採取されたものを「枳殻(キコク)」と呼び生薬として利用します。     どちらも帰経は脾胃であり、行気散滞や消積など、お腹に生じた気の滞りを解消する作用があるとされます。     作用としては、枳実 > 枳殻となり、より未成熟な方が効能が強いようです(日局だとどちらも枳実とされるようです…

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【鍼灸師向け】絡穴について

今回は、絡穴について解説していきます。   絡穴の特徴   絡穴は、霊枢 経脈に「手太陰之別 名曰列缺」などといったように登場する経穴の一群ですね。   その名の通り、経脈から絡脈が分かれ出る場所であり、表裏経を繋ぐ役割も果たしています。     それ故、絡穴は所属経絡以外に、表裏経の病証も治療範囲に及びます。   例えば、肝の実熱が胆に波及し、口苦などの症状が現れた場合に、蠡溝を処方するなど治療範囲を広げるのに役立ちます。     上下に移動する 経脈篇では、最後に 「凡此十五絡者 実則必見 虚則必下 視之不見  求之上下 人経不同 絡脈異所別也」 とあります。 十五絡脈は、虚実によって見えたり隠れたりするから、上下に探してみろよ。   という感じの文章です。      つまり、体調によって絡穴の位置が変化するので、安易に取穴すべきでないということですね。   さらにいうと、経脈は縦に流れている幹線ですから、絡脈の位置がズレても、あくまで上下に収まります。   取穴が横にズレてしまうと他経に入りこんでしまうので注意が必要でしょう。

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【鍼灸師向け】原穴について

今回は、原穴についての解説です。   原穴といえば、霊枢 九鍼十二原に登場する非常に重要な経穴ですね。   その原穴は、どのような特性を持っているのでしょうか? 補瀉ともに適応する   霊枢では、 「十二原者 五蔵之所以稟三百六十五節気味也」 とされ、   難経六十六難では、 「五蔵兪者 三焦之所行 気之所留止也」   とされています。 …つまり、 三焦から化生した臓腑の原気が通過したり、留まる場所が原穴なのですね。 このとから、原穴は、補瀉ともに適応すると考えられています。   虚実挟雑証などには、難経六十九難による母子補瀉法よりも、利用しやすい経穴ですね。   臓病に用いる   また、霊枢には 「五蔵有六府 六府有十二原 十二原出於四関 四関主治五蔵 五蔵有疾 当取之十二」 とあります。   つまり、 四肢関節にある、原穴は五臓の病に用いることができるということですね。   このことから、原穴は腑病より、臓病に用いられる傾向があります。   陰経では兪穴が原穴となるが、陽経では異なる   陰経は、兪穴が原穴となっていますが、陽経は、兪穴とは別に原穴が設けられています。   なぜ、陰経と陽経では、原穴の存在する位置が異なるのでしょうか?    難経六十二難には、 「蔵井滎有五 府獨有六者 何謂也  然  府者陽也 三焦行於諸陽 故置一兪 名曰原 府有六者 …

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【鍼灸師向け】五兪穴について⑥

前回までの、五兪穴についての記事をまとめると…   井:心下満 - 肝鬱気滞 - 疏肝理気の作用を有する 滎:身熱 - 心火亢盛 - 清心瀉火の作用を有し、経絡・経筋上の熱を取り除く 兪:体重節痛 - 湿困脾土 - 健脾去湿の作用を有し、経絡・経筋の痛みを取り除く 経:喘咳寒熱 - 外感肺実 - 止咳平喘・降気の作用を有する 合:逆気而泄 - 胃気上逆・腎気不固・腎不納気 - 気機の調節作用を有する   といった感じでしょうか。    これらの主治は、概ね「臓病の実証」に用いることを前提としています。   腎に実なし、という言葉があるように、腎実の証は考え難いものがあります。   前回の記事で紹介したように素問 水熱穴論 「腎者胃之関也」で述べられる、腎の機能障害による、胃への影響と考えるべきでしょう。     陰経・陽経の相違 難経六十四難では、 「陰井木 陽井金  陰栄火 陽栄水  陰兪土 陽兪木  陰経金 陽経火  陰合水 陽合土 」   とされ、 五兪穴は、陰経・陽経で五行の性質が変化するということを述べています。      学生時代、この相違について疑問に思い質問したところ、 「国家試験のため、とりあえず覚えろ」 と言われたとき、 一瞬(?)の殺意が芽生えたのは言うまでもありません。   将来的に無意味なことならば、専門学校教育で習う必要のないことです。   臨床上でな…

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